老化による生活の支障で、最初に本人及び家族が不安を感じ、またけが等の危険が生じるのは「歩行」ですね。主に「自宅内で、その不安を解消し安全に日常生活を送れるようにする方法」を実務経験等をもとに紹介しましょう!

1 福祉用具の使用

 1人での外出が困難になるとともに、自宅内で生活する場合でも足元がおぼつかなくなってきたとき、まず頼りにするのは、杖などの福祉用具でしょう。自力で立ち上がりと歩行が可能な場合で、より安全に日常生活を送るための手段になります。ボディメカニクス上、杖・歩行器などで床面と接している点が3~4点以上になれば、体はそれだけ安定します。

(1) 杖の使用

 ① 一点杖

  一番最初にお年寄りが手にされるのは、ホームセンターなどどこでも市販されている、先端に滑り止めのゴムがついているシンプルな「一点杖」でしょう。ちょっと歩くのがおぼつかなくなってきたなという初期の段階では、もちろん有効です。高くて数千円程度なので、頻繁に外出される方は、外出用と自宅内用の2本用意されてもよいでしょう。

 ② 三点杖・四点杖

  より歩行が不安定になってきた人には、「三点杖」「四点杖」がよいでしょう。(三脚杖・四脚杖とも呼ばれます。)地面につく足が三脚または四脚になっているもので、若干重くなりますが軽い素材のものもあるので、使い勝手が問題なければ利用してみてはどうでしょうか。 (このレベルになると介護保険の対象にもなります。) 

(2) 歩行器

 ① 持ち運び型

  杖ではもう不安定であって、かつ両腕が使えバランスを保てる方であれば、歩行器がおすすめです。持ち上げる力があり、また設置部分が床で滑らないタイプ(車輪がついていない)がよい人は、この「持ち運び型」(「交互型」ともいう。)の利用が考えられます。「持ち上げては床に降ろす」を繰り返して前に進みます。

 ② 車輪付き型

  上のイラストにあるような設置部に車輪(キャスター)がついていて、歩行器につかまりながらも転がして進めるタイプです。病院で手術の後に使うような肩に近い高さで腕をのせて進む頑丈なタイプ(馬蹄型とも呼ばれる)から、より小型・軽量なタイプまであります。体重をかけるとキャスターが沈み込みブレーキがかかり滑らないものもあります。(よりしっかりと体を支えて歩行する必要がある方、円滑に車輪で転がして進むタイプがよい方など、状態に応じて選ぶとよいでしょう。) 

 ※ (いわゆる)シルバーカー : 一般にお年寄りのちょっとしたお出かけ・買い物等に使われる「シルバーカー」というものもあります。これは、一時腰掛けるシートやお買い物袋、そしてブレーキなどを備えたものが多く、まだお元気な方の外出用としては便利でしょう。福祉用具の中にも、もっとシンプルですがこれらに近い機能を持ったものもあります。その方の希望や運動機能に合ったものを使うとよいでしょう。 

※ 車いす : 歩行が困難な状態が進めば、最終的には多くの方が「車いす」を使用することになりますね。 (このことについては、また別途取り上げたいと思います。

2 環境の整備 ~住宅改修~

 お年寄りが、自宅内でできるだけ自力でかつ安全に生活するためには、段差を解消したり手すりをつけたりといった、いわゆるバリアフリー化ための住宅改修も当然必要になってきます。(このテーマについては、また別途掲載したいと思います。)

まとめ

 以上、自宅内でも歩行が困難になってきた時に、活用すると便利かつ安全な用具をご紹介しました。実際に使用しようとされる場合は、これらを予備知識として持ちながら、地域包括支援センター・ケアマネジャーさん・介護用品のレンタル業者さんと相談して決めるようにしてください。 (制度・手続き・費用などについては、また別途お話ししたいと思います。)

【編集後記~kappaおじさんの独り言~】

kappaおじさん

…思い返しますと、親の介護の始まりは、医療機関や買い物等の外出の付き添いでした。ある程度歩行ができても公共交通機関で一人で自由に活動できなくなる日は、本人の体力や認知機能の衰えによって意外と早くやってくるものです。この段階だと、まだ補助用具や車いすを使うほどではないので、自家用車に乗せて同行することが多いですが、回数が多くなると介護者にとっても負担にはなってきますね。車への乗降自体が大変になってきたら、回転して座席が降りてくる、或いは車いすごと乗車できるといった「福祉車両」の検討も必要になるかもしれません…