~ 「母の看取り日記」篇について ~
‥‥現在母は、98歳。終末的な介護・医療をしてもらえるいわゆる「ナーシングホーム」と呼ばれる施設に令和7年6月下旬に入所し療養しています。言うなれば人生最期の期間を迎えている母について、その「日常の様子」と「家族の思い」・「家族がしてあげられること」、そして「看取り」についての知識・情報などをとにかく記録しておきたいと考え、これらを「日記」という形で掲載しています。私個人にとっての「記録」というだけでなく、「終末期(つらい言葉ですが)」にあるご家族の介護・看護をしておられる方の何か参考になることがあれば幸いです‥‥
「特別篇」について
ここではいつもの「母の看取り日記」とは離れて…いわゆる看取りについてのある程度まとまった「情報提供」と「私なりの思い・考え」などをお話しします。私の頭・気持ちの整理のためと、終末期にいるご家族の介護・看護を行っていらっしゃる方に少しでも参考になればと思っています。
そもそも「看取り」とは‥‥
そもそも、「看取り」とはどういうことを指すのでしょうか?
「看取り」とは
「看取り」とは、辞書で調べると単なる「看護」の意味となっていますが、福祉・医療の分野では一般に「終末期を迎えた方に対しての(ターミナル)ケア」のことを指します。基本的に疾患そのものへの治療は行わず、本人の意思をできるだけ尊重しながら緩和ケアを中心とした援助を行い、QOL(Quality of Life)の向上を目指します。
看取りを行う場所としてどこを選ぶか?
(1) 人生の終わりを迎える場所は‥
人生の最期を迎える(ことができる)場所としては、大きく分けて「①医療機関、②介護施設、③自宅」があります。若干のコメントを加えて説明します。
① 医療機関‥‥何らかの疾病にかかっていらっしゃれば、その治療を行っている医療機関で最後を迎えるというのは、ごく一般的なことです。ですが、現在急性期の治療を行う病院は、 積極的な治療を終えるといつまでも入院させておいてはくれません。緩和ケア病棟への移動か他の療養型の病院への転院、または今後の医療的ケアの必要があまりなければ介護施設への入所を求められます。ということで、医療機関の選択は、終末期での比較的長期の療養が行われる病院においては可能ということになります。
② 介護施設‥‥現在はいわゆる「看取り」を行ってくれる介護施設は多くなっており、その種類もいろいろあります。
ア) 介護保険が適用され、施設のスタッフから介護サービスを受けられる公的な「介護保険施設」として「特別養護老人ホーム(特養)」・「介護老人保健施設(老健)」・「介護医療院」があります。
イ) その他民間施設として、「介護付き有料老人ホーム」・「介護型または医療型のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」があります。
③ 自宅‥‥そして最期を迎える場所としては最も希望の多いのが自宅です。
(2) それぞれの機関・施設で施される医療・介護はどのようなものか?
① 医療機関
余命が長くないと医師が判断してもなお高度或いは重度の医療が必要とされる場合は、もちろん入院している医療機関で最期を迎えることになります。ただ先ほどもお話ししましたとおり、後は緩和的医療を行うだけという場合は、それを行う病棟または療養型の病院に移ることになります。
※ そして今後必要とされる医療のレベル・内容がそれほど高くないと判断される場合は、以下の②または③の選択肢が可能です。
② 介護施設
上記(1)②で述べた施設でも一定の医療は可能です。ただし、施設により違いがありますので、今後必要なレベルのまたは希望する内容の医療(終末的医療)を継続的に行ってもらえる施設かどうか、その質・内容については、個別に確認する必要があります。また、その施設の職員が医療的サービスを行う施設と外部の医療機関の訪問医療を受ける仕組みになっている施設とがありますので、そのあたりもよく把握することが必要です。後者の場合は、別途自分たちで主治医(かかりつけ医)と訪問看護の機関を決め契約する必要があります。
※ 例えば、特養の多くでは嘱託医の1月に1回の診察が行われ点滴は補水のみなど、受診できる医療の内容・量(回数)などが施設により違いますので注意が必要です。
※ 医療費としても、制度的に入居費用の枠内で行われる施設と訪問診療の内容・回数などで費用が決まる施設とあります。
③ 自 宅
現在では、訪問医療と訪問看護、そして訪問介護が在宅で受けられるようになってきましたので、家族による介護が難しい高齢者でも自宅で看取り段階を過ごすことができるようになってきました。担当のケアマネジャーと相談して訪問による十分な医療及び介護の体制を整えることが必要です。ただし、家族の介護が一定程度可能な場合或いは同居している場合、その家族が一定の介護の負担を看取り期間中継続して行うことができるのか?する意思があるか?を慎重に確認しなければなりません。
(3) それではどこを選ぶのか?
① 決め方
〇 もちろん、ご本人及びご家族の意思・希望が明確であれば、極力その方向で入院先または入所先を探し、または自宅に戻ることになります。ただし、希望が明確であっても、「そちらで本人・ご家族が望むレベル・内容の医療・介護が継続して受けられるのか?その間ご家族が必要な看護・介護を行えるか?経済的負担を賄えるのか?」等を検討・確認しなければなりません。当然入院・入居しようとする機関・施設の担当職員と十分な打ち合わせを行って決める必要があります。
〇 その際、現在入院中であれば、院内の「医療ソーシャルワーカー(退院調整をする相談員)」(通常「地域連携室」「患者相談室」などの名前のついた部署に在籍する。)と相談しながらつぎの入院・入所先を決めることになります。
〇 福祉施設に入所中でその施設でそのまま看取りに移行するのであれば、その施設内のケアマネジャーとよく相談して(関係職員と家族が構成員となった「看取り会議」なるものを開催するところもあります。)、看取り段階に入っていくことになります。
〇 自宅で看取りを行う場合は、その期間希望する十分な医療・介護を受けられるように、担当ケアマネジャーと相談しながら、その体制を整えることが大切です。福祉用具(介護用ベッド、エアマットなど)の確保から始まり、訪問医療・訪問看護・訪問介護が継続して受けられるよう手続きを行っておく必要があります。
〇 いずれの選択肢を選ぶにしても、(ア)「希望する医療・介護サービスが受けられるか」、その上で(イ)「介護するご家族がいらっしゃれば看取り期間介護が継続可能か」、(ウ)「それらによりかかる費用が1月あたりどの程度になりその負担が可能か」を、関係する職員・ケアマネジャーとよく相談しながら確認し決定することが重要です。
それぞれの場所で家族がすること・できることは?
(1) そうは言っても家族がどう決めるのか?
〇 余命が長くないと医師に判断された時、人生の最期をどこでどのように過ごすか(「看取り」をどう行うか)という問題はそう簡単に決められることではありません。終末期にあるご本人の精神的・身体的な状況としては、かなり衰弱していらっしゃるでしょうから、現実問題として判断し決定するのは多くの場合周りのご家族ということになります。
〇 ご本人が「遺言書」「終活ノート」等に記載されていたとか、お元気な頃どのようにおっしゃっていたかなどで、ご意思がある程度明確であったにせよ、「ア)本人の精神的・身体的様態、イ)必要とされる医療・介護のレベル・内容、ウ)近隣に適切な医療機関・施設が見つかるか、エ)必要となる費用を本人の資産・収入およびご家族の出費で継続的に負担できるのか、オ)看取り期間にお世話をするご家族の事情や合意形成」などを総合的に勘案し現実に可能な方法を選択するしかありません。
〇 それまでお世話あるいは直接介護されてきたご家族、遠方に住んでおられるご家族など、ご家族それぞれの事情・思いも様々でしょう。現役世代でフルタイムで働く必要のある方、遠方に住んでいらっしゃる方にとっては、自宅での看取りはかなり難しいでしょう。また、人生最期の時間だけでも住み慣れて懐かしく安心できる自宅で過ごさせてやりたいと思うご家族もいらっしゃるでしょう。そのような様々な事情・思いを前提としながらも、上で述べたような要件を一つ一つ吟味して、実際問題として可能な方法を選択することになります。必ずしも、ご本人或いはご家族の思うとおりには進まないことも多いかと思います。
(2) やっぱり「自宅」が一番よいのか?
① 最近の統計・報告書の結果は‥
〇 令和5年の厚生労働省のある報告書によりますと、終末期になって最期を迎えたい場所についての意識調査の結果では、「自宅」と回答した人が最も多く、一般の方は約44%、医療・介護従事者は57%前後です。「医療機関」と回答したのは、一般の方は約42%、医療・介護従事者は28~32%です。
〇 また、令和4年の統計によりますと、日本人の死亡場所としては、約66%が病院、約17%が自宅、介護施設が約14%となっています。(この統計は、多分高齢者だけの統計ではないので、病気・事故等でなくなる若年・壮年層も含んでいるとは思います。)
〇 これらのことから言えるのは、もちろん「人生最期の場所として自宅を望む方は多いけれども、実際自宅で亡くなられるのはそれに比較して少数である」ということです。また、これらの結果で興味深いのは、実際現場で治療・介護を行い人の生死に直面していらっしゃると思われる医療・介護従事者の方々については、最期の場所として医療機関よりも自宅を望まれる人が一般の方より多いということです。このことが何を示唆しているのかはちょっと考えてみたいところです…。
② 看取りの場所はどこになろうとも‥
〇 以上のことから、ご本人・家族の意思・思いは重要ではありますが、取り巻く諸々の事情も合わせ鑑みて現実的に実際の看取りの場所・方法は決めざるを得ず、決まっていきます。ご家族の心情としては、これまでの介護についての後悔、本人・家族の希望には添えない現実に対する不満、今後の実際の介護に当たっての不安や負担感など、様々な思いがあるかと思います。しかし、今後の看取り期間を乗り切っていくためには、決まったことは受け入れながら前向きに気持ちを立て直して進んでいかなければなりません。
〇 諸事情により決まった一定の場所と方法で看取りを行っていく上で家族として大切なことは、「そこにおいて本人が望むこと・ご本人にとってよかれと思われることで自分たち家族が実際にできることを精一杯やっていくこと」に尽きます。このことについては、次項でお話ししましょう。
(3) 親が終末期を迎えた時家族がすること・できることは‥
~ 「親との最後の時間を、少しでも多く・濃密に一緒に過ごすこと」が、「お互いの思いを素直に伝えあうこと」が、最期の期間をどこで過ごすにしてもよい看取りにつながっていくことと思います。 ~
① 医療機関・介護施設での看取りにおいて
〇 常時の看護・介護は、当該機関・施設の職員にお任せすることになります。そのことにより、家族は何もできないかというとそんなことはありません。専門の職員さんたちにではなく家族でしかできないことがもちろんあるのです。一番大切なことは、ご本人とのコミュニケーション(精神的なケア)でしょう。
〇 可能な限り面会に赴き、ご本人とコミュニケーションをとりましょう。
・ ご本人の精神的・身体的状態を聞き、その痛み・苦しみやその時の感情・ひと時の安堵感など‥を思いやり慰めたり共感したりする。体をさすったり、手を握ったりスキンシップをする。
・ 思い出話や家族・知人などの噂話などをして、ともに懐かしむ。
・ その他、季節のこと、世の中の事、ご本人の好きなことなどなんでもいいので、雑談を交わす。
・ 状況に応じ、本人に対する感謝の念や大切に思っていることなど家族の心情を伝える。等々
〇 家族だんらんの時間を持つ。本人が会いたい人がいれば連絡を取って会う機会を設ける。
〇 本人が好きなもの・大切にしているものなどをそばに置いて見たち聞いたりしてもらう。写真を飾ったり、好きな音楽を流したりする。
〇 食べたいものがあれば、可能な限り口に入れてもらう。等々。
② 自宅での看取りにおいて
〇 定期的な医療処置・看護・介護のケアは、かかりつけ医や訪問看護・訪問介護の職員さんに行ってもらいますが、それ以外の時間以外の必要な介護・見守りは家族が行うことになります。
〇 「飲食・服薬の介助、口腔・体全体の清潔の保持、更衣、排泄の処理、体位交換などの褥瘡の防止などの介護」、「夜間を含めた見守り、体温・血圧などのバイタルサインのチェック」などが必要になります。
〇 そのほかは上記①と全く同様です。上で述べたようなコミュニケーションや本人が望む・喜ぶと思われることを可能な範囲で行います。
まとめ
〇 「看取り」は、本人に人生の最期の時期をどう生きてもらうか、家族がどうお世話するかという重大な問題です。そして、今の時代に必要とされる医療・介護のレベルを確保しながら、この時期を過ごし最期を迎えるには、家族の力だけではどうにもなりません。「どこで、どのような関係機関等が関わりながら、家族がどのように本人を見守り支えていくか」ということを決めていくため、頼りとなる専門機関の職員と納得のいくまで話し合ってかつ一定のスピードで進めて行く必要があります。
〇 まずは、担当の医師(かかりつけ医)に本人の現在の様態と今後必要な医療の内容を聞き、その上で担当のケアマネジャーと相談し話を詰めていきます。そのほか入院していればその病院の医療ソーシャルワーカーと次の移転先を決めていく「退院調整」をしながら、次の入院先または入所先の見学・調査を行い、入院・入所する先の窓口の職員(契約担当者・相談員等)と十分話をすることが重要です。
【編集後記~kappaおじさんの独り言~】

kappaおじさん
今回は、いわゆる「看取り」段階において、「本人に人生の最期の期間をどう過ごしてもらうか、家族は何をするか・できるか」という人生の最終段階における究極の課題についてお話ししました。
これらの情報は、専門家の書籍、私のこれまでの介護経験から提供しています。体系的・専門的な知見ではありませんので、あくまで参考にしていただきながら、関係する医療・福祉職員、特にケアマネジャーとよく話し合って、実際の決断・行動をしていってください。